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今回、きらけあ調査員がお邪魔した、高齢者総合ケアセンター 【ハミングベル中道】 は、平成16年5月に『笑顔・まごころ・ハーモニー(調和)』をモットーに設立されました。場所は大阪市東成区、大阪城公園がすぐ近くにあり、小学校や幼稚園に囲まれた活気溢れる住宅街です。
施設名のハミングベルからも連想するとおり、音楽を積極的に取り入れ、常に歌声の響く施設を目指しているそうで、施設には毎日のように地元ボランティアの方々が訪れ、音楽による交流会の開催や、地元のコーラスサークル活動への参加を通じて地域交流を図るなど、ハミングベルの歌声は施設を飛び出して、地域に広がっています。
また、重厚で落ち着いた造りの施設がある敷地の一角には、“みんながいつまでも健康で過ごせますように”“地域の子ども達が健やかに育ちますように”との願いが込められた、お地蔵様が建立されていて、地域との深い密着が感じ取れました。
そんな「ハミングベル」で欠かせない存在として活躍しているのが、今回の取材にご協力いただいた、音楽療法士の鈴木さんです。
早速、鈴木さんに音楽療法士について伺いたいところですが、まずは“音楽療法”について少しお話しておきましょう。
一般的には、【音楽によって人は勇気づけられたり癒されたり、心を動かされたりします。音楽療法とは、このような心と体に生じる現象を積極的に利用して、様々な疾病の治療や改善に役立てようというもの。】と定義されています。
高齢者・障害者福祉施設や医療現場での、音楽療法に対するニーズは高まりつつありますが、現在はまだ、音楽療法士は国家資格ではありません。しかし、音楽療法学を専門的に学べる学科を設置している大学も増えつつあり、将来的に国家資格化への動きも見えつつあります。
それでは最初に、音楽療法士を目指されたきっかけを鈴木さんに伺ってみましょう。
『私が中学生の頃に阪神大震災が起きたのですが、被災地で活動されていた音楽療法士の新聞記事が紹介されていて、何となくなんですけど惹かたんですよ。それがずーっと心にあったんでしょうね。大学進学の時に高校の進路の先生に相談したら音楽療法専攻がある大学を紹介してくださったんです。そしてその大学に入り、高齢者・脳性麻痺の方向けの音楽療法をメインに学びました。
何より、お年寄りと一緒に居ると心地良くて・・・。人生の何十年も先輩で、いろんな事を乗り越えられてきた尊敬できる方々と同じ空間で働くことが出来るなんて本当に幸せな仕事だと思ったんですよ!』
そう目を輝かせて語る鈴木さん。
それで、こちらに音楽療法士として求人応募されたのですね?
『いえ、実は違うんですよ〜。』
(え?!どういうことなんでしょうか?)
鈴木さんがおっしゃるには、高齢者福祉施設で常勤スタッフの音楽療法士という求人はまだまだ少なく、 【ハミングベル中道】でも介護職スタッフとして求人が出されていたのですが、音楽を施設全体のコンセプトとして運営されている点に興味が湧き、応募されたのだそうです。
しかし、採用内定後に、どうしても大学にあと1年残って、音楽療法への理解を深めたいと考えた鈴木さんに、施設側から『1年後に待っています。』という嬉しいお返事が・・・!
こうして1年後、晴れて常勤の音楽療法士が誕生したわけです。でも、それには高齢者福祉施設で働きたいという鈴木さんの強い意思があったから。大学在学中にヘルパー2級の資格を取得されるなど、「自分の描いたビジョンに必要なことは何でもする!」という姿勢で取り組まれ、常に最善を尽くそうとされているからこそ、つかんだチャンスなのですね。
次に鈴木さんのお仕事は具体的にどのようなものなのでしょうか?
音楽療法は利用者様個々のニーズやケアプラン、習慣スケジュールに沿って、基本的にマンツーマンで行われているそうです。オルガン演奏に合わせて一緒に歌ったり、一緒に楽器演奏したり、音楽に合わせた軽い体操や嚥下障害予防のための呼吸法のレッスンなどを組まれているそうで、様々な工夫をされていることが伺えました。
では実際に、音楽療法を通じて感じる利用者様の変化はどのようなものですか?
『認知症と不安神経症などをお持ちの方がいらっしゃるのですが、その方は周りの方と馴染めず、お一人で過ごす時間が多かったり、心を閉ざされている感じでした。でも、音楽療法を始めて約2年になる今では、心を開いていろいろお話しして下さるようになったり、元気よく歌われて表情も明るくなったように思います。』
と、笑顔で語ってくれた鈴木さん。
鈴木さんがフロアで利用者様数名と歌っていると、徐々に他の利用者様が集まってきたり、その歌が流行った時代の思い出話で利用者様同士のお話が弾まれたり、みなさん自然に笑顔がこぼれるそうです。
そんな風に自然に利用者様の笑顔を引き出しているのは、きっと鈴木さん自身がとびきりの笑顔をされているからだろうなぁと思いました。笑顔もセラピーの大切な要素の一つなんですね!
鈴木さんは続けておっしゃいます。
『楽しい・嬉しい気持ちで音楽を受け入れられる時もあれば、しんどい時や元気がない時は誰にでもあります。
そんな時には、無理に明るく笑顔で始めるのではなく、その時々の気分に応じた、無理のない選曲から療法を始めていくのです。これを「同質の原理」と言うんです。』
なるほど〜。
そうした配慮の積み重ねが、単純に音楽を楽しむことだけではなく、個々の利用者様用のプランに基づいた療法につながっていくわけなのですね。
また、鈴木さんは、余暇活動として、週2回のハンドベルサークルや、利用者様からの要望に応じて、随時レクリエーションを行われています。その他にも、地域交流として小学校の生涯学習でのコーラス講座や、各種ボランティア受入れの窓口も担当されています。音楽療法だけにとらわれず、幅広く活動されている鈴木さん。毎日お忙しいわけですね!!
『地域交流の場で講座やレクをさせて頂いて、逆にこちらが教えてもらうことばかりなんですよ。
皆さんから、昔話や共通する年代の話、思い出の歌、昔使われていた物などいろんなお話しをして頂けるので、すごく
勉強させてもらっています。』
鈴木さんからお話を伺っていると、音楽療法士という仕事に楽しく、真剣に向き合いながら、その時間を大切にされている様子がひしひしと伝わってきました。
調査員が訪れたこの日も、フロアの一角でオルガンの準備を始めた鈴木さんの周りには、あっという間に利用者様たちの輪ができました。準備が整ったと見るや、早々に「軍歌!」とリクエストの声が上がり、鈴木さんのオルガン演奏がスタートしました。
歌詞の本をじっと眺める方、反対に一字一句違えずに歌う方、声の大きさやテンポも様々。リクエストはどんどん続き、6曲ほどを歌い終えた後、最後に調査員も参加して「仰げば尊し」を合唱し、各自が夕食の席に向かわれたのでした。
住んでいた場所や歩まれてきた人生など各々異なりますが、同じ年代を生きてこられた利用者様たちの歌うお姿は、まるで学生時代の音楽の授業のようでした。そんな楽しくて心温まるひと時を体験させていただき、心がほっと温まる想いで調査員は施設を後にしました。
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