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今回、きらけあ調査隊がお邪魔したのは排泄用具の情報館『むつき庵』。
場所は、京都府上京区、二条城の北北西、堀川通から商店が立ち並ぶ小道を西に入ったところ。赤い扉が印象的でとってもおしゃれな外観の建物です。この建物、元々は民家だったそうで、内部もほとんど手直ししていないとか。言われてみると確かに、どなたかのご自宅にお邪魔したかのような寛げる雰囲気が漂っています。
さて、「むつき庵」の「むつき」とは、そもそもおむつのことで、漢字では『襁褓』と書くらしく、元々は、生まれたばかりの赤子を優しく包む産着を指す言葉だそうです。一人でも多くの方の生活を産着のような優しさで包みたいという願いを込めて「むつき庵」は名付けられました。
そんな優しさ溢れる「むつき庵」の代表である、浜田きよ子所長から、まずは設立の経緯と活動内容についてお伺いしました。
設立のきっかけは約20年前にさかのぼります。
浜田所長のお母様が糖尿病を患われました。同時に白内障の病状も進行してきたので、看護師の勧めもあって、おむつをつけた生活に変えることにされました。ところが、それまで自力で積極的に活動なさっていたお母様が、おむつに変えてからは、ベッドからほとんど動かなくなってしまわれ、残念ながら約1ヶ月後にお亡くなりになられたそうです。
浜田所長はその時、『母があんなに嫌がっていたおむつの使用を、もう少し慎重にしていたら何かが違っていたかもしれない。』という気持ちを抱かれ、自らの経験を活かし、高齢者の暮らしを広げるための排泄ケアや福祉用具の研究の取り組みを始められました。
排泄用具の情報と相談の拠り所として設立された「むつき庵」は、今秋で5周年を迎えられるとのこと。
館内には所狭しと、たくさんのおむつや、ポータブルトイレなどが展示されており、来館者が気軽に手にとって見られるようになっています。
おむつだけでも布・紙合わせて300種近く(!)、各種メーカーの商品を取り揃え、性別・体型・疾病や障害の様子、利用者ひとりひとりの生活スタイルに合わせて提案し、試用のおむつも無料配布。もちろん試用後のアフターフォローも行われています。
また、「むつき庵」の活動範囲は館外にも広がっていて、排泄用具の情報館としての役割を担うだけではなく、京都府・滋賀県の特別養護老人ホームへ出向き、具体的な困難事例に対して助言をする活動も行われています。
入所施設は在宅介護とは違い、個人別に設備や備品を用意することができないケースも多いのが実状です。しかし、排泄ケアの新しい気づき・発見をもたらせることで、介護する側の意識を向上させる効果があるそうです。
そんなケア意識と技術のスキルアップのため、「むつき庵」では《おむつフィッター研修》を開催しています。
この研修は、『おむつを提案することだけにこだわらず、医療や住環境、適切な福祉用具などを熟考しながら、幅広い視点で快適な排泄ケアを考えていくことのできる人材の育成』を目的とし、基礎コースの3級と、3級修了者を対象とした応用コースである2級が設定されています。また、今年からは1級課程の研修もスタートするとのことで、その注目ぶりは「北は北海道から南は沖縄まで!」日本全国から参加応募が殺到し、毎回すぐに定員に達してしまうほどなんです
そこで、きらけあ調査隊では3月に、3日間かけて行われた3級研修の様子を拝見させて頂くことにしました。
スケジュールですが、1日目はオリエンテーションも兼ねての講義、2日目は排泄用具についての講義と実技、最終日はグループワークとなっています。
そのうちきらけあは2日目にお邪魔しました。
今回も、最北は青森県、最南は鹿児島からと、36名の皆さんが参加されていました。
参加者の多くはお一人で参加され、平均年齢は30代後半。学校を卒業されたばかりの方から、経験35年のベテランまでと幅広く、職種も介護士・看護師・介護ショップ店員・建築関連・福祉系専門学校教員など多岐にわたっています。しかし2日目ともなると、皆さん打解けられ、随分とリラックスされた様子でした。
そして、気になる研修の中身はと言うと、この日はまず、午前中に浜田所長の講義を受け、午後からは最終日に発表する事例検討の為に4つの班に分かれて、各班で熱い討論を繰り広げました。ここでは皆さんの積極性が大いに発揮され、様々な職種・経験・地域性などを超えた交流がなされていました。
その後、班は2班に分かれて、順に【むつき庵の見学とポータブルトイレの説明】、【おむつの選び方と基本的な当て方】について学びました。
【おむつの選び方と基本的な当て方】では各メーカーの、タイプが異なるおむつや尿パッドなどを紹介し、その特徴や使い方が事細かに説明されていました。そして実際に装着しながら、当て方のポイントをレクチャー。例えば、テープ止めタイプのおむつでは、テープの止め方の違いで、装着している利用者さんの身体的負担や座る姿勢が異なってくるのを実体験し、おむつをキレイに当てるだけでは、動きやすさを確保することや尿漏れを防ぐことは出来ないことを学んでいらっしゃいました。
皆さんが身を乗り出して説明に耳を傾けながら、質問が次々に飛び交う様子を拝見して、調査員は、お一人お一人の『この研修でたくさんのことを学び取ろう。』という、熱意を感じました。
参加者のお一人、岡山から参加の澤井さん(仮称)は、介護福祉士の資格を持ち、特別養護老人ホームで14年のキャリアを積まれた方。毎年少なくとも2回は興味を持った県外の研修・セミナーに参加するほどの勉強家でいらっしゃいます。以前、「むつき庵」が主催された“おむつファッションショー”の模様がテレビで紹介されたのを覚えていて、今回の参加を決意されたそうです。最後に澤井さんは、「今後も精力的に自分磨きをしていきたい。具体的には、もっと医学的知識を身につけたい。」という目標をお話しくださいました。
また、富山県からは同じ特別養護老人ホームで介護士、生活相談員としてご活躍されているお二人が参加されていました。今回の参加は、約3年前に浜田所長が富山で行った福祉用具プランナーの講義を受けたのがきっかけで、決められたそうです。
お二人は「施設に戻ってから、ぜひこの研修で学んだことを活かしたい。」と力強く話してくださいました。
【むつき庵の見学とポータブルトイレの説明】では、浜田所長の案内にしたがって情報館としての「むつき庵」を見学しました。
館内にはおむつやポータブルトイレなどの展示品だけでなく、車椅子でも楽々と回転できる広い玄関、片手で簡単に設置できるスロープなど、家庭での具体的な福祉用具の使い方を分かりやすく、本来民家だった建物を利用して展示されていました。
参加者の皆さんは、福祉住環境コーディネーター協会理事でもある、浜田所長からの説明を直に受けられるとあってか、『浜田所長の言葉を一言も逃すまい』と、熱心に耳を傾けていました。
また、浜田所長がこれまで出版された書籍や新聞各紙などで連載、紹介してこられた 《高齢者の暮らしを支える様々な生活便利グッズ》 も展示されていて、高齢になって、身体が不自由になっても、高齢者が自分らしく豊かな生活を送れるように、排泄ケアだけに限らず、高齢者の役立つ情報を発信するという浜田所長の理念を、参加者の皆さんは感じた様子でした。
そうして2班がそれぞれ約1時間ごとに入れ替わりながらの研修を受け、2日目が終了。
と、思いきや、1日目の研修終了後、実は参加者の皆さんに、ある課題が出されていたんです。それは、各自がおむつを着用して排尿を体験し、2日目にその感想を提出するというものでした。
この排尿体験には、すでに3回トライしたことがある方もいらっしゃいましたが、今回のように就寝中という長時間、おむつをつけていたことはなかったそうで、皆さんの感想は『ゴワゴワした感じがした。』『漏れないか心配だった。』『仰臥位(ぎょうがい)ではどうしても排泄できなくて、座位(端座位が主流)でようやくできた。』『どうしても蒸れと尿臭を感じてしまったし、漏れないかが気になって、そのまま着けていることができなかった。』というものでした。
この様に、自身の排尿体験をもって、おむつを当てられた利用者さんが、普段どんな風に感じていらっしゃるかを知っていくことの大切さを改めて実感なさっていました。
そして最終日である3日目には、それまでの研修を受けて、グループワーク事例検討を行い、それを発表するそうです。
出題された事例は、次のような内容でした。
Kさんは在宅で生活をされている79歳の男性です。高齢による筋力低下があり、歩行がやや不安定です。
夜間は昔の習慣から、布団で寝ています。夜間のトイレ利用は、妻にトイレまで付き添ってもらっています。
最近トイレまで間に合わないことがあるため、夜用の紙パンツに大きな尿パッドを併用しています。妻は、夜間頻繁に起こされることと、紙パンツに大きな尿パッドをあてているにも関わらず、布団に漏らしてしまうことで困っています。どうしたらいいでしょうか?
討論が始まると、初めは各々の職種や勤務先での経験などに基づいた意見が中心ですが、次第に研修で学んだ内容が加わり、さらにグループのメンバー構成によって、多方向からの視点でアレンジされ、纏め上げられていきます。
それぞれの班からの発表内容を共有することで、【おむつを提案することだけにこだわらず、医療や住環境、適切な福祉用具などを熟考しながら、幅広い視点で快適な排泄ケアを考えていく】という、この研修の目的を実感していくのです。
その後、個別テストを受けて、全過程が終了との事です。
皆さん、大変お疲れ様でした!
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